おやびん3人分くらいの大きさのモミの木が、村の広場に運び込まれた。
俺は知ってる。これは、クリスマスのツリーになるんだ。
こんな風に出来上がっていく途中なんて、初めて見た。
濃い緑葉の大きな木に、色とりどりのモールときらきら光る金色のベル。
リボンの付いたリンゴ、楽器や天使をかたどった様々な飾りたち。
…こんな近くでなんて、初めて見た。
きんいろの星
「破天荒」
「はい!なんでしょう、おやびん!?」
「手ー出せ!」
ただの木がツリーになっていく様子に見とれていた俺は、おやびんに呼ばれて手を差し出した。
「これ!今年はお前の役目な」
「え?これは…?」
伸び上がったおやびんの手から、俺の手に落とされた金色のもの。
それは、下に差し込むような部分のついた、金色の大きな星だった。
「おう、てっぺんに飾るんだぞ」
おやびんが指差す方向に目を向ければ、コパッチたちが互いに肩車をしながらモミの木に飾り付けている。
わいわいと騒がしい声、その手にはたくさんの楽しそうな色とりどり。
「あれの…ですか?」
「おう、そうさ」
おやびんは胸を張って頷く。
一瞬だけ残念そうな視線を感じ、慌てて俺は星をおやびんに差し出す。
「い、いえ、俺になんてもったいない!おやびん、どうぞ!」
しかしおやびんは鷹揚に首を振って、尊大な(風に見える)態度で俺を見上げた。
「毎年俺がやってるんだけどなー、今回はお前初めてだから、譲ってやる」
「ほ…本当にいいんですか?」
「男に二言はねえ!」
胸を張るおやびんを見返して、俺は、
「…ありがとうございます!」
その星を握り締めて、笑顔を作ってみせた。
もしかしたらおやびんには、いつもの俺の笑顔と同じに見えたかもしれないけれど、俺は、本当に嬉しかった。


『クリスマスといったら?』
そう聞かれても俺は、月並みな答えしか言えない。
サンタが枕元にプレゼントを置いておいてくれたことなんてなかったし、ツリーを飾りつけたこともない。
家族と飲むシャンパン、湯気の立つ七面鳥。
そういったものに憧れがなかったわけではないけれど。
…それでも、やっぱり。
人並みな子供時代を送れていたら、俺は今どうしていただろうと、たまに思う。


「よし、破天荒、これを着ろ!」
「これ…は」
それは俺でもわかった。
白い毛皮の付いた赤い服と帽子。これはサンタの服だ。
「そして俺がトナカイだ!」
「おやびん、似合ってますっ!!」
服の上からサンタ服を羽織った俺の前で、おやびんはいつのまにかトナカイの角と赤い付け鼻をつけていた。
しっぽまでつけて得意げに微笑む姿に、俺はメロメロだ。
「よーし、破天荒!用意はいいぞ、俺に乗れ!」
「はい!?」
勢いよく言われたその台詞に、俺の返事は裏返る。
俺に乗れって俺に乗れって俺に乗れって…!?
頭の中で良からぬ妄想…いやいや、想像が渦巻く俺を尻目に、おやびんは朗らかに続ける。
「サンタはトナカイに乗って子供にプレゼントを配りに行くんだぜ!知らねーのか?」
四つん這いになって俺に背を向けたおやびんがそういうのを聞いて、俺は少し落ち込みながら、おやびんに近づいた。
「…は、はい。では僭越ながら、この破天荒、おやびんに…って」
が。
「ぎゃーッ!?」
「おやびーん!サンタが乗るのはトナカイじゃなくてそりですよっ!」
横から誰かの尻で突き飛ばされて、俺は思いっきり吹っ飛んだ。
「何ぃ!?そうだったのか!この首領パッチ、一生の不覚!」
地面で思いっきり顔をすった。おやびんの声すら遠くに聞こえる。
誰だかは見なくても分かる。こんなことをしそうなのはただ一人。
「わーかーがーしーらーさーんー…!?」
「お、何だ破天荒、いたのかよ」
そこには、俺と同じサンタの服を着た若頭が立っていた。
俺と違って長い髪を三つ編みにしているのが、何だか衣装と合っていて憎たらしい。
「いたのかよじゃねーよ!人のこと思い…っ切りふっ飛ばしやがって!」
「なんだよ!おやびんのサンタは一人でいいんだよ!」
「俺一人で、だろ?」
「はぁ!?新入りの癖に生意気言うんじゃねーよ!」
「そっちこそ名無しのくせにいばるんじゃねー!!」
「ななななんだと!?気にしてるのに!」
「おい、お前ら喧嘩止めろよ。ツリー終わったみたいだぞー」
「「はい、おやびん!」」
同時に返事をしてしまい、俺と若頭は睨み合った。
が、この戦いは俺の勝ちさ。
だって、俺の手の中にはおやびんに渡された、これが。


「破天荒、こっち来い」
「はい、おやびん!」
おやびんに呼ばれて、俺は小走りで広場の中央まで行く。
「ほら、星乗っけていいぞ」
このツリーを完成させるのに、一番大事なこのてっぺんの星。
コパッチたちも、若頭も、おやびんも、俺と俺の手の中の星を見ている。
嬉しいのと名誉なので、俺はちょっと手が震えていた。
濃い緑葉の大きな木に、色とりどりのモールときらきら光る金色のベル。
リボンの付いたリンゴ、楽器や天使をかたどった様々な飾りたち。
そして一番上に、金色の大きな星が今、俺の手で。

「メリークリスマス!」
おやびんの声を筆頭に、みんなが叫んだ。
コパッチたちの合唱、若頭の少し低い声。
もちろん俺も。
「メリークリスマス!」

サンタからのプレゼントも七面鳥もいらないから。
どうか。
どうかこの幸せに、来年も会えますように。
 
ハジケ組のクリスマス。
若頭の名前って、結局何なの?

色々古くて何がなにやら!
 
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