そんな幸せを乗せて
本日は晴天。
面倒くさがり屋の野郎共は、綺麗好きの航海士にはたかれて、週に一度の洗濯大会を開くことになった。
「じゃあ、サンジとおれが洗うから、おめェらが干してくれ。いいか?干す前に一回絞るんだぞ」
「わかった!」
「面倒臭ェな…」
「その積み重ねがさっきのナミさんの怒りさ…!おれは今非常にやる気だぞ!」
「へいへい、せいぜい頑張れよ、アホ眉毛」
「ムカーッ!?何だとこのクソマリモ!」
「そこまでにしとけよ、洗濯は意外と体力使うぞー?」
「よし!じゃあまずはメシ食って体力つけるぞ!」
「さっき食っただろ!」
騒がしくしながらも、それぞれが持ち場につく。
ルフィとゾロが物干し竿を立て、ウソップがたらいに水を張り、サンジが船室から大量の服を運んでくる。
「しかし、こりゃマジで量が多いな…」
「文句言ってもどうにもならねェだろ。とりあえず始めようぜ」
パン、と音を立ててウソップが服を広げ、それが洗濯大会開幕の合図となった。



「ゴムゴムのォー!」
ルフィの声が響く。
ねじり合わせた両手には、それぞれシャツの両袖。
「脱水!!」
ギュルルル!と派手な音を立て、腕のねじれが解けるのと同時に絞られていくシャツ。
たちまち大量に吸っていた水は切れ、
「あ」
ついでにシャツがねじ切れた。
「なにやってんだこのクソゴムーッ!!」
サンジの蹴りがルフィの頭に綺麗に決まるが、首が伸びただけで怪我はない。
「このシャツナミさんに選んでもらったんだぞ!?それをこう、こう…こんなに…!」
「にしし、悪ィ」
「悪ィで済んだら海軍は要らねェ!!!」
悪びれないルフィの頭にもう一発蹴りが決まった。
「んなことでいちいちキレてんじゃねェよ、アホコック」
「ナミさんに選んでもらったシャツだぞ!?」
「どのシャツも着ちまえば同じだろ。このオシャレ眉毛」
「ナミさんを馬鹿にする気か?この親父腹巻」
「…」
「…」
言葉こそないものの、飛び交う雷にも似た視線。
何だ何だ?とわくわくする船長をよそに、狙撃手はやけに所帯じみた手つきで手早く衣服を洗っていく。
「おいサンジー。あんまその服洗剤につけすぎてると伸びるぞー?」
「おっと、いけねェ」
天敵のマリモから視線を外し、たらいの中からオレンジ色のシャツを拾い上げた。
「こっちもナミさんに選んでもらった服だからな、大事にしねェと」
「よし!おれが干してやる、サンジ、貸せ!」
サンジの手から、ゴムの腕が服を攫っていく。
「ゴムゴムの〜!」
「「「もういいって!!!」」」
三人の声が綺麗にハモった。



「んんっ!洗濯終わりっ!」
サンジとウソップのシャツやバンダナを中心に、ルフィの上着やゾロの腹巻が風にそよぐ。
それを満足げな目で見渡し、ルフィは大きく一つ頷いた。
「いや、お前が言うなよ…」
その横で、げっそりと疲れた様子でウソップ。
「ほとんどおれ一人でやったんじゃねェか…」
力の加減の出来ないルフィ、気付いたら昼寝をしていたゾロ、ナミに呼ばれておやつ作りに行ってしまったサンジ。
「あー…貧乏クジだぜー…」
「いいじゃねェか!綺麗になったんだしよ!」
その背をばしばしと叩きながらルフィが豪快に笑った。
「あら?洗濯終わったの?」
「おう、ナミ!」
「聞いてくれよナミ!こいつらの戦闘時以外の役に立たなさを…!」
「まあ、そうなるとは思ってたけどね」
わかってたなら何で途中でサンジ連れてくんだよ!というウソップのツッコミは聞こえなかった振りをして、
「ほんと、これだけ、良く溜め込んだわよねー」
船室から出てきたナミは、翻る服たちを見渡し、苦笑いを浮かべた。
「なかなか壮観だろ?」
「そうねー…まあ、そう言ったらそうかもね」
赤、緑、黄色、青。
色とりどりが風にそよぐ。
それをルフィとウソップも眺めた。
どこまでも続く海と空の青、白く翻る洗濯物。
何だかちょっと嬉しくなって、ルフィが微笑んだとき。
「んナーミすわぁん!おやつ出来たよー!!」
厨房からサンジが飛び出してくる。
「おー!サンジ!何作ったんだ!?」
「ナミさんに分けてもらったみかんで作った、みかんゼリーだっ」
「んまほー!」
「んまほー!」
「はい、ナミさん。トッピングに星のゼリーで、爽やかさを演出してみました」
「かわいい!ありがと、サンジくん」
「でへへ、それほどでも〜!!…テメェらの分は厨房だ」
「よし、行くぞウソップ!」
「おう!」
「…お…?何だ…?」
どたばたと走っていく音に、ようやく目を覚ましたゾロ。
伸びを一つした所で、目の前に広がる光景にやっと気付く。
「ん?洗濯…終わったのか?」
「テメェの分も厨房だ。早く行かねェと、伸びる胃に全部食われちまうぜ」
「何がだ?」
とゾロが聞き返した瞬間。
「あー!ルフィてめェ!そりゃおれのだ!三つも抱え込むんじゃねェよ!」
「すっげェ美味ェよみかんゼリー!!」
響いてくる声に、ナミがご愁傷様と肩をすくめた。
「あー…取られちゃったみたいね」
「だから、何がだよ?」
寝起きで思考能力が落ちているのか、首をひねるゾロに、ナミはにこりと笑いかけた。
「まあ、今日もいつもどおりの平和な日ってことよ」
「…?」
天気は晴天、波は穏やか。
変わらない毎日が楽しい彼らを乗せて、今日も幸せな船は海を行く。
 
メリー号と、まだ5人の海賊団。
何人増えても彼等は彼等。素敵だなあ!

洗剤が合わなくて腹巻が縮む話入れ損ねた。
 
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