「あーもー、ほんと!何なのよもう!」
ナミのヒステリックな声が響く。
「もう、本当に嫌だ!何なのよもう!!」
「わかる、わかるぞナミ!一体何なんだよもう!」
答える声は一つ、ウソップの声だ。
「何でこんなことになるのよ!誰のせいなのよ!」
「んなのルフィしかいねェだろうがよ!全部アイツのせいだ!」
「本当よ!私、この島に寄りたくないってちゃんと言ったわよ!」
「おれだって島に入っちゃいけない病だってちゃんと申告したぞ!」
「なのに、何でルフィはあんなに楽しそうだったのよ!」
「おれに聞くなよ!」
「何であんなにワクワクしながら一人で飛び出すのよ!」
「それはゾロにも言えよ!何でルフィ探しに一人で飛び出すんだよ、あの迷子癖マリモは!」
「それに、何でサンジくんはここにいないのよ!」
「本当だぜ!さっきまですぐ後ろ走ってたはずじゃねェのか!?」
「本当、何で大事なときに役に立たないのかしら!」
ナミが叫んで、ダンと足を踏み鳴らしたとき、その耳を掠めて何かが飛び去っていった。
「…ほら!見つかっちゃったじゃない!」
「いやおれのせいかよ!」
向こうの木の陰に同じような体勢で隠れながら、ウソップがびしっと裏手ツッコミを入れた。
立ち向かう。
この島がなんと言う島なのか、ナミもウソップも知らない。
ログポースの指す先に進む途中、島影が見えた。それだけの縁の島。
しかし冒険好きのルフィがそれを見逃すわけもなく、チョッパーとブルックを加えた4人で一斉に島に入ってはいけない病になったと言うのに、船長の独断で獅子の船首は進路を外れた。
浜辺で拾った地図に拠ればこの島は宝島だそうで、ワクワクを抑えきれず飛び出したルフィと、それを追ったゾロ、それからナミとウソップとサンジ。他のメンバーがどうしたかは知らない。
とにかく、その胡散臭い宝の地図はもちろん罠で、立ち塞がったのは幾人もの同業者で、ナミとウソップはサンジとはぐれ、何処かからの激しい銃撃から身を隠し、進むことも戻ることも出来なくなって、ここにいない船長に対して不満を投げつけているのだった。
身を隠す大木の幹を、掠めて傷つける銃弾はやまない。
離れた場所から、出て来い、金を出せ、女には優しくしてやるよ、なんていう、典型的な下卑た男たちの声が聞こえる。
「ウソップ!」
「何だ!?ここを脱出するいい考えでもあんのか!?」
「ゴー!」
「おれは犬か!」
「馬鹿ね、アンタはキャプテンウソップ様でしょ!?あんな程度の雑魚キャラを倒す話は散々聞いたわ!」
「馬鹿言え!あんなの嘘に決まってるだろ!」
「知って言ってるわよ!」
「なおさら馬鹿か!」
「アンタ、覚えてなさいよ!帰れたら、」
一瞬、ナミの視線が揺らいだ。
「―帰ったら、アンタの借金、二倍にしてやるんだから!」
「テメェ!次からクリマタクトの整備費、絶対ェ取るからな!!」
「嫌よ!」
「言い切るか!?…うお、」
ぎゃあ、という声がそれに続いた。
どうやらツッコミと共に身を乗り出した時に安全圏から長い鼻の先がはみ出し、そこを銃弾が掠めたらしい。
ナミの隠れる木の幹ももうかなりボロボロだが、どちらかというとウソップの方が狙われているようだった。
男だから仕方ない、とナミは思う。
「死ぬ!もう駄目だおれ!」
「頑張りなさいよ!アンタが死んだら誰が私を守るって言うの!」
「鬼か!いや魔女かテメェ!」
「サンジくんなら喜んで私のために死んでくれるわ!」
「馬鹿言え!アイツがお前のために掛けようとしたのはおれの命だ!」
「何それ!」
「だから!おれの命に代えても、お前は死なせねェって言ってんの!!」
何それ、と言い返そうとして、ナミは言葉に詰まった。
「奴ら、やたらめったら撃ってるけど、こっちにゃ一発も当たらねェ!腕のいい狙撃手はいねェんだ!」
それに気づいているのかいないのか、ウソップは同じ調子で続ける。
「隙はある!こんだけ連発してりゃストックも使い切って、もうすぐ弾も切れるはずだ!合図するから、そしたら走れ!おれも飛び出す!」
「…」
「こっちはパチンコだ、弾込めの時間は要らねェ!多分、あの前の方の5人くらいなら…」
「馬鹿じゃないの」
「あァ!?聞こえねェ!」
「馬鹿じゃないの!!」
「ハァ!?誰が馬鹿だ!」
「アンタよ!いい、一人で生き延びたって嬉しくないの、私は!」
「…う」
「飛び出す役目は私よ!接近戦なら、私の方が得意だもの!」
「お、おい」
「だから、アンタは私を援護しなさい!全力で!」
「…」
「私があの前の5人をぶっ飛ばしてる間に、アンタはそこで身を隠しながら上の3人と奥の5人をやっちゃって!」
「…危ねェぞ!?」
「大丈夫よ!だって、アンタ、狙いに関しちゃ凄いんでしょ!?」
ナミは、微笑んで見せた。
長く走ったのとずっと木に身を寄せ隠れていたため、どこもかしこも汚れて擦り傷だらけだ。
隠してはいるつもりだが、実はさっき、一発の弾丸が足を抉っていった。もう長くは、走れそうもない。
だがそれは、ウソップも同じ。
汚れて擦り傷だらけで、どうやら向こうは肩に食らったらしく、だらりと下げた腕が真っ赤に染まっている。
まったく、あの腕でどうやって自分を逃がそうというのか、とナミは苦笑した。
チョッパーに会いたい、と思った。
それは医者だからとかそう言うのではなくて、あの小さく優しい存在に、会いたいと。
その為には、帰らなければならないから。
「…わかった、任せろ!」
「ありがと!アンタの、そういう状況読める所、好きよ!」
「おれはお前の、金にがめつい所以外、全部好きだぜ!」
「何よそれ!私の方がアンタのこと好きみたいじゃない!」
「えーと、つまり…?ん、テメェ、自分が金にがめついってスゲェ認めてんじゃねェか!」
「アンタも自分のマトモな所、過小評価しすぎなんじゃない!?」
「馬鹿言え!今だってめちゃくちゃ震えてんだぞおれ!」
「私だって凄く震えてるわよ!何とかしなさい!」
「後でよければ、ウソップスペシャルヒーリングハグをしてやれるんだが!」
「いくらくれるの?」
「おれが払うのかよ!」
律儀に裏手ツッコミを入れたウソップの目つきが変わるのを、ナミは見た。
「…カウントする」
「うん」
「あと…10発。9、8発」
「…」
「7発…6発」
「ウソップ」
「5発。ん?…4、3発」
「キス一回でいいかしら、料金」
「………1」
ウソップが一瞬黙った間を2発目と1発目が横切って。
ナミはそんな彼の反応に満足しながらクリマタクトをしっかり握って、地を蹴った。
こんなにたくさんの敵をぶっ飛ばしたら、きっとまたクリマタクトの整備が必要になるだろう。
そしたら、次こそは一回くらい、料金を払ってやってもいいんじゃないかな、と思う。
それは多分、スペシャルハグとやらと同じくらいの料金でいいのだろうから。
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おーらふざけんじゃねえよ立ち向かう!
某筋少のタチムカウが非常にナミウソチョパ的なアレだと思うので。
いい歌だ…
多分この後、サニーに戻ったらサンジがドーナツ作ってくれるんだと思います。
青髭の兄弟ならぬ、ぐる眉のコック。
取りあえず立ち向かう感じが書きたかったので男前ナミさん。
スリラーバーグでウソップ今助けるとか言い出したときにはどうしようかと思った。
ああもうナミさん好きすぎる。
ウソナミなのかナミウソなのか、そこが問題か?(ガイモン風
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