「あ…っ、やっぱやだ…!無理、だ…っ!!」
先ほどまでおとなしくしていたウソップが、サンジがそれに手をかけた瞬間暴れ始めた。
「やじゃねェよ。ここまで来といてやめるつもりか?」
サンジはそう答えながら、ウソップのむき出しの肩を掴む手に力を込める。
「く、ぅ…」
その肩から、ウソップが小さく震えているのが伝わってくる。
本当に怖がっているのだということはわかっている。だが、ここでやめたくないのだ。
ここまでたどり着くのに、本当に長い時間をかけた。
あのレストランで出会ったその日から、ずっとだ。ずっとずっと、長い間。
優しい声もかけたし、多少強引な手も使った。
そしてやっと今日の日、サンジの望んでいた行為を最後まで行う機会を得たわけで。
だから、ウソップが本気で怯えているのだと知っても震えているのに気付いても、サンジはその肩を掴む手を緩めはしない。
「ウソップ…」
耳のすぐ近くで呟いてやれば、びく、と体を震わせるのが分かった。
「で、でも、そんな…でけェ…なんて、聞いてねェし…」
ウソップはちらりとサンジが手をかけているそれに目をむけ、しかしすぐに逸らす。
絶対に無理、という呟きがサンジの耳に届いた。
そのかたくなな態度に、サンジは仕方なくアプローチの方法を変えることにする。
「ウソップ…なァ、頼むよ」
「ぅ…」
「このまんまじゃおれも辛ェ。おれを助けると思って…今回、だけでいい」
「…」
ウソップの視線が揺れたのを、見た。
「頼む…ウソップ」
「……今回…だけ…だな…?」
「ああ」
「………わかった」
ウソップが小さく、本当に小さく呟いて頷いた。
思わず、サンジは笑みを零す。それを見てウソップも、少しこわばってはいるが笑顔を浮かべた。
「今回だけ、だからな?おれは怖いのも…痛いのも…嫌なことは、できるだけしたくない主義なんだ」
「ああ…知ってる」
サンジは頷き、微笑んでウソップの癖の強い髪を撫でてやって、
「…じゃあ、行くぞ」
「っ…」
そのぬめる太い先端が、小さく開いたウソップの入り口に当たり、そして一気にナカに押し込まれて―――
君のためなら
「っ…」
「…どうだ?」
「…」
「ウソップ」
もう一度声をかけた瞬間、ウソップの手が動いた。
テーブルの上においてあった水の入ったコップを取り、その中身を一気に飲み干す。
「あっ、テメ!!」
サンジの停止も間に合わず、褐色の喉がごくりと動いた。
口の中のものが、丸のまま飲み込まれた証拠。
「くーっ!!…やっぱ、まじィ」
「テメェ…いい度胸だな…」
「だ、だってほんと、どう考えても噛むとか無理だったし」
ぜいぜいと荒い息を吐きながら、ウソップは、目の前のサンジの怒りに縮こまるしかない。
だって、何度も聞いたのだ。
それは自分のために特別に誂えられたメニュー。
様々な味付けをし、基の素材の味をできるだけ抑えるようにして作られた料理だったのだから。
しかし、味なんかより何より、まず見た目がドンとキノコそのままだったのがウソップ的にはNGだった。
「せ、せめてさ、何なのかわかんねェくらいに細かく切ってくれるとか」
「それも前やっただろ。出汁が良く出て嫌だっててめェが言ってた」
「う…だったら、やっぱ細かくして今日のコレみたいな味付けするとか」
「切った素材にこの味付けじゃあ、味が染みすぎて濃くなるんだよ」
ふう、とサンジの吸ったタバコの煙が空に吐き出された。
「ったく…しょうがねェ奴だな…」
その呆れたような声に、ウソップは顔を上げることが出来ない。
コックであるサンジが忙しいことは知っている。
メンバー全員の飯を用意し、食わせ、その片づけまでを全て一人で行っているのだから。
皿洗いの手伝いや野菜の皮むきくらいなら自分だって手伝うが、それでも、そんなのほんの足しにしかならないことくらいわかる。
そんなに忙しい中で、なのに、自分の好き嫌いを知って、それを克服させようとしてくれる。
ウソップはそんなサンジの優しさがとても嬉しかったし、できることならその優しさに答えたいと思う。
だが、しかし、それでも、…どうしても、キノコだけは無理なのだ。
「…ごめん」
ウソップが呟くと、サンジはそれにちらりと顔を向けただけですぐに視線を料理の皿に移してしまった。
「あ」
そのまま、指でつまんで自分の口へ放り込む。
ウソップはそれを見ていることしか出来なかった。
自分のために、時間をかけて工夫して作られたものが、一瞬で消えていく様を。
しかし。
「んう!?」
次の瞬間、視界がいっぱいの金色に覆われた。
驚いてぽかんと開いた口が柔らかいものに覆われ、何かが押し込まれる。
ゆっくりと金色が去っていくのと同時に、顎を押さえつけられた。
力ずくの咀嚼。
何が起こっているのかわからず無抵抗のうちに何度か頭部を上下されて、何度目かに思わず、その噛み砕いたものを飲み込んだ。
「…〜〜〜ッ!!??」
それが何だったのか気付き、ウソップは慌てて口元を手で覆った。
「吐くなよ」
「っ…!」
一瞬えづきそうになったが、何とかこらえた。ちょっと涙が出た。
「っテ、テメェ!!何てことすんだよ!!」
テーブルを叩いて涙目で立ち上がったウソップと対照的に、サンジは涼しい顔。
「どっちのことだ?」
「どっちって、そんなの、…」
無理やりキノコを食わせたこと以外にあるのかよ、と言いかけて、その手段に今更のように気付いてしまった。
かぁ、と顔が熱くなるのが抑えられない。
「お、お前なぁ…」
力が抜けて、ウソップは椅子にへたり込んだ。
サンジは相変わらず涼しい顔でニヤニヤ笑っている。
「で?」
「何よ」
「感想は?」
「どっちの」
「んなの、両方に決まってる」
「ずるい」
ずるくなんかねェ、どっちもおれがやったものさ、感想が聞きてェのは当たり前だ、とサンジは言う。
無理やり口の中に押し込まれたもの、を、押し込んだもの。
それが口の中をするり撫でていった感触は、まだ残っているから。
「…っ、ごちそうさまでしたっ!!」
「あ、おい待てコラ!」
ぱん、と手を合わせて素早く立ち上がる。
伸ばされたスーツの腕を掻い潜って、走り出した。逃げ足ならば負けないから。
「このクソ野郎!夕飯はキノコ尽くめにしてやるからな!!」
その怒りのこもった声も、今はウソップの足を止める材料にはならない。
片や死んでも食いたくないと思っていたもので、片や死ぬほど幸せなもので。
(ああ、チクショウ)
これから夕飯にキノコが出たら、今日の日を思い出してしまうんだろう。
絶対、これまでよりもキノコが食えなくなった、とウソップは思った。
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定番キノコネタ。
いや、わかってますよ、使い古されたネタなことくらい…
シモい感じに見せかけたものを書きたかっただけ。
尻スボミーでごめんなさい。
そのキノコ食わねェんならおれのキノコを云々とか言わせようと思ったけどさすがにやめた。
ち、違うよ!私が下品なの好きだなんてそんなことないよ!
小学校の頃、給食が全部食べられなくて、先生とクラスの一番デカい男子に机と椅子に大縄跳びで縛り付けられて無理やり食わされたの思い出した…(嫌な記憶だ
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