その島に隠れるように停泊して二日目。
明日には出港しようというそんな日だった。
昨日も今日も、買出し班と船の修理班に分かれ行動している。
買出し班はナミとサンジ。残りは全員修理班。
しかし二日目の今日、ゾロはナミにこう言われたのだ。
「二人じゃ荷物を持ちきれないから、一緒に来てちょうだい」
「ハァ?何でおれが」
「来てくれないなら借金10倍」
そうだそうだナミさんの言うことを聞けい!とアホコックもうるさいので。
仕方なく今日は昼寝を諦め―昨日は、修理をせずに眠っていた―、あくびをしながら上陸したのだった。
人より少し  
不器用だから
「…ん?」
あくびの涙をこすっていたゾロは、ふと立ち止まりあたりを見渡した。
「…」
共に歩いていたはずのナミとサンジの姿が見えない。
どころか、メインストリートらしき太い道を歩いていたはずが、いつの間にか細い路地浦を歩いていた。
「…アイツら、またはぐれやがったのか」
彼らと歩いていると、そんなことが良くあるのだ。
「ったく、何やってんだか…」
彼らがいないならば、目的地も何もない。
大きく一つ溜息をついて、ゾロははぐれた仲間を探すため、来た道を引き返すことにした。
…正反対に。

細い路地は雑多な店が並んでいる。
怪しげな粉薬を売る店、名も無き画家が道端で描いた絵を売っているかと思えば、その隣には古びた本屋があったりする。
小さな食料品店、雑貨屋…とその店頭を見るともなしに見ていたゾロは、そこに、ふと見知った後頭部を発見した。
「本当にいいのか、こんなに安く譲ってもらっちゃって?」
「ああ、外から来るお客さんは珍しいからね、サービスだよ」
「ありがとな、おばちゃん!」
ぶんぶんと手を振りながら並びの店から出てきたのは、見間違うことなどない長い鼻。
「ウソップ」
「おーゾロー…ってゾロ!?お前なんでこんな所にいるんだよ!?」
呼べば、そのままの笑顔でこちらを振り向いたあと、大きく半歩引いてのけぞる。
「…何でって、どういうことだ」
「お前、今日はナミたちと食糧買出し係だったろ」
「ああ」
「またはぐれたのか?」
「アイツらがな」
「お前がだよっ」
ビシ、と裏手ツッコミを入れられたが、それが何でなのかゾロにはよくわからなかった。

「で?お前今からどうすんの?」
「どうするって?」
「ナミたちに合流するのか、帰るのか」
「お前は?」
何してるところだったんだ、船の修理をしているはずじゃないのか、というところを省いた文章だったが、ウソップには通じたらしい。
何か大きくうなずいて、聞いてくれるのか、と重々しく言った。
「いや」
「聞いてくんねーのかよ!」
「どうせ長々といらねェことばっかり話すだろ、お前」
「あー、そんなこと言うなら絶対ェ話してやらねェ!」
ふんだ!と子供のように顔をそむけたが、それでもやはり話し足りなかったらしい。
「…ルフィがよぅ、直したところから壊してくんだよなァ」
「ああ」
「板はまだあるんだけど釘が足りなくなっちまってな、だからしょうがねェから、おれが買出しに来たんだ」
そう言いながら、鞄を開いてその中身をゾロに見せた。
覗き込むと、ごちゃごちゃとたくさんの何に使うのかわからないものの中にひとつ、真新しいプラスチックの箱がある。
「じゃあ、もう買物はすんだのか」
「おう、まァな!」
「船に帰るのか」
「うーん、まァ、そうかな。この辺の店面白いけど、あんまりルフィをチョッパーに任せとくのも可哀想だしな」
そして腕を組み胸を張って、芝居がかった声で続ける。
「まったく、皆、おれ様がいないと駄目だな!」
船の修理に買出し、それから。
「…ああ、そうだな」
「お?何だ、やけに素直だなゾロ。やっとおれ様の素晴らしさに…」
「船までの道がわからなくなった」
がくり、とウソップは肩を落とした。
そのまま、す、と自分の背後を指差す。ゾロはその肩越しに向こう側をうかがうが、特に変わったところはない。
「…って、誰がおれの背中を見ろって言ったよ!」
「いや、指差したからそうなのかと」
「向こうの方!お前が今歩いてるこの道をまっすぐ20分くらい行ったら船がありますです」
「へェ?」
ゾロは、来た道を引き返していたつもりだったので素直に驚く。
まったく、どこで道が曲がっていたのか。
「ゾロも、もう船帰んのか?」
「ああ。アイツらともはぐれたしな」
何か言いたげなウソップを置いて、行くぞ、と声をかける。
「あ、待てよゾロ!」
たた、と駆け寄ってくる軽い足音。
「だからまっすぐだって!何で曲がんだそこを!!」
仕方なくゾロは足を止め、振り返ることにした。

「まったく、お前の方向音痴っぷりは逆に才能だな」
「馬鹿にしてんのか」
「いーや、ある意味尊敬だねこりゃ」
そんなことを呆れた口調で呟きながら、ウソップが右手を差し出してくる。
「…」
「いや、握手してェわけじゃねェから」
握り返してみたゾロの手を外し、その手をつなぎなおす。
「こう」
意図が分からず、繋がれた手を見て首を傾げるゾロに、ウソップは怒ったような口調で言った。
「お前すぐ迷子になるから!こうして手ェ繋いでりゃ、はぐれる心配はねェだろ?」
「ああ、そういうことか」
「それにおれは一人で歩いてて敵に襲われたら怖いので護ってほしいわけなんです」
「…ああ」
「ほら、行くぞ!遅れんなよ!」
そう言いながら、ゾロの手をぐいぐい引いて、ウソップは歩き出す。
ゾロは、その少し早目のスピードに、何も言わずについていった。
そんなに早足なのも、お喋りのくせに今は何も言わないのも、その顔色が原因だと知っているから。
船の修理も買出しも、道案内だって器用にこなすはずの男が、そんなことに妙に不器用だと知っているから。
「…だったら、もう少しゆっくり歩いてもいいと思うんだがな」
ゾロの呟きは。
「あ?ゾロ何か言ったか?」
「いや、何でもねェ」
まだ、届かなくてもいい。
繋いだ手の暖かさが、言葉よりも手先よりも器用に両者の思いもつないでいるから。
 
ゾロとウソップって正反対だと思うんだよね。
こう、持っているものが。
強さとか、人付き合いのしかたとか。

そんなこととは全く関係がなく、
ゾロに憧れるウソとそんなウソに恋したゾロとか、そんな感じで。
ウソの方に恋の思いがあるかはわからないけれど。

ちゃんとゾロウソ書いたのは初めてか…?
 
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