「サーンジィー!!」
「うおっ」
ひざの辺りにおもいっきりタックルを食らってたたらを踏む。
指先をつるりと滑った皿を危うくしっかりと掴みなおし、元凶を睨みつける。
「何しやがんだ、危ねェじゃねェか!」
しかし元凶…チョッパーはまったく悪びれず、キラキラした目で見上げてくる。
「サンジ!砂糖分けてくれ!」
「砂糖ォー?」
話が飲み込めず首をひねるも、そのキラキラした瞳にはそれ以上語りそうな気配はない。
「…わかったわかった。とりあえず離れろ。砂糖持ってこれねェ」
「やったー!!」
「その前にこれだけ洗わせろ」
「わかった!」
素直に離れたチョッパーを取りあえずは置いて、まずは皿洗いに集中することにする。
そこは料理人だから、譲れないわけで。
君の、喜ぶこと
「ウソップー!砂糖貰ってきたぞ!」
「よーッス。何やってんだ」
「お?サンジ、お前も来たのか?」
船室、ウソップ工場。
散らばった鉄片に囲まれて木箱に腰掛けていたウソップが、ゴーグルを上げて客を迎えた。
「ウソップ!砂糖!」
「おおーっと待て!ウソップ工場は土足禁止だぜ!」
「お、おう!」
素直にチョッパーは足を拭き、慎重に木箱に登る。そして小さな袋を勢いよく差し出した。
「砂糖っ!」
「おうよ、そこ置いといてくれ」
「…で、今日は何作ってんだ?」
話が一段落したのを見届け、サンジが口を挟む。
「良くぞ聞いてくれました!」
「くれました!!」
とたん、誇らしそうなウソップとそれに追随するチョッパー。
「見て驚け、天才発明家キャプテンウソップ様の本日の超発明はこちら!」
「キャプテンなのか発明家なのかどっちだよ」
「うむ!そこは永遠の謎なのである!」
「謎スゲー!」
じゃーん、という効果音を口で演出しながら、ウソップが何かの機械を差し出す。
大きく平たい鍋の真ん中に太くて短い筒状のものを通してドーナツ型にした、不恰好な何か。
ひっくり返すと、筒状の下の部分にはヒートダイアルと何かのためのモーターが取り付けられていることが分かる。
「…あー、そういう事」
「にっしっし、そういう事なわけだ!」
「な、何だ?そういう事って何だ?」
サンジが納得したように頷くが、チョッパーには何が何だか分からない。
「たまには粋なことするじゃねーか」
「たまにはって何だよたまにはって」
「なー、何なんだ?何なんだ?おれ全然わからねーぞー!?」
自分だけわからないと拗ねた声を出すチョッパーの頭をウソップが小突く。
「黙って見とけって」
「お、おう」
ウソップはにやりと笑うと、砂糖の小袋をサンジに渡した。
「んじゃ、サンジ、この真ん中の所に砂糖入れてくれ」
「おう」
「チョッパーはこの棒を持って待機だ!」
「わ、わかった」
真ん中の円筒状の部分は、中が空洞らしい。ふたを開けて、サンジが砂糖をその中に流し込む。
「んじゃ、スイッチ入れるぜ?」
スイッチオン!と叫んで、何かと連動した赤いレバーをウソップが倒す。
「おお!?」
機械の中心部、円筒状の部分がぐるぐると廻りだす。
チョッパーは渡された割り箸を握り締め、何が起こるのかと機械を見つめる。
何が起こるのか大体予想のついているサンジは、タバコを取り出して火をつけた。
そして、その変化は突然。
「あれ…?」
ドーナツ型の部分にキラキラと光る何かが見えた気がして、チョッパーは目をこする。
見間違いではない。酷く細い糸状のものがキラキラと、いつの間にか現れている。
それはすぐに量を増し、絡まりあいくっつきあって、まるで雲のような…
「チョッパー、その棒でこいつを絡め取るんだ!」
「う、うん!」
割り箸をその中にそっと差し込むと、ぐるぐると廻る部分から吐き出されるきらきらの糸が、すぐに割り箸に絡みつく。
甘い匂いと、割り箸の先に出来上がっていく、雲のようなお菓子。
「すげェ!わたあめだっ!!」
割り箸を動かし、夢中で糸を掬う。
すっかり機械に夢中なチョッパーを覗き込むようにして、ウソップがにやりと笑う。
「どうだ、すげェだろ?」
「うん、すげェ!さすがウソップだっ!!」
ありがとう、という言葉に、ウソップがくすぐったそうな笑顔を浮かべた。
「おいおい、わたあめはいいが、あんまり砂糖使い込むんじゃねーぞ」
「わかってるよォ!」
サンジが横から忠告するが、チョッパーの耳にはまともに入らない様子。
人間たちは肩をすくめ合ったが、その視線はどこまでも優しかった。

そして、それから数日間わたあめを食べ続けたチョッパーが酷い歯痛に悩まされるのは、また別の話。
 
ウソッチョフレンズはかわいすぎて死ぬ。
サンジが少し空気でごめん。
 
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