私のベッドの傍に窓がある。
その外には四季があり、木々は花をつけたり紅葉したり落葉したりする。
鳥が舞い、風が吹く。人々の楽しそうな声さえ聞こえる。
しかし、私にとってそれは一枚の絵でしかなかった。
勝手に動き回る絵。
私にとって何の関係もない、そこにあるだけの絵。
眺めていれば気はまぎれても、何の救いにもならないもの。
私にとって世界とは、窓枠という額の中に四角く納められた一枚の絵だった。
あなたに会うまでは。
「それで、ねえ、今日はどんなお話をしてくれるの?」
あなたという名のせかい
私の絵の中に突然現れたそれは、血と肉を持った人間だった。
私にとっては、両親がいなくなってから、ついぞ見たことのなかったもの。
(お前も一人なんだってな)
クラハドールやメリーなんかとは全然違う、砕けた調子の人。
袖のない服を着ている人なんて見たことがなかったから、そんな小さなことでも驚いた。
あんなに大きな鞄を持っている人も、お医者さん以外には見たことがなかったし。
しかもその鞄から、とても色々なものが出てくるので、さらに驚いたのを覚えている。
だって、ねえ?ヘビの抜け殻や玉虫なんかを綺麗だと思う日が来るなんて思わなかった。
そして、あんなに堂々とうそをつく人を、私は見たことがなかった。
(知っているか?南の海には生きた骸骨がいるんだぜ)
(本当!?)
(ああ、本当さ!…ここだけの話だがな、おれはそいつと友達なんだぜ)
(凄い!私も会ってみたいな)
(いやァ、結構ショッキングだぞ?夜中に奴が、うっかり鏡に映った自分を見ちまって悲鳴をあげたくらいだ)
(まあ…!怖がりさんな骸骨さんなのね)
窓をコンコンと二度叩く音が、世界が始まる合図。
窓を大きく開けて、あの人の笑顔が見えたら、そこを中心に世界が広がる。
木々の鮮やかな緑も、鳥たちの歌声も、私の視界と聴覚に響く。
現実は、いつだってあの人の見る夢の中にあった。
(海ネコって生き物を知っているか?)
(聞いたことがあるわ。確か、海鳥の一種よね?)
(その通り!だがな、とある国では、海に住んでいるネコのことをそう呼ぶのさ)
(海にネコが?)
(驚きだろう?その国じゃあ、そいつを崇めている宗教まであるんだぜ)
(ふーん。きっとかわいいんでしょうね)
(とんでもねェ!あいつは恐ろしいやつだぜ。何たって体長100メートル、目の大きさでさえ、おれの身長ほどもあってだな…)
夢はいつだって夢で、だけどそちらのほうが、私にとっては鮮やかだった。
見たことのない世界。見たことのない冒険。
あの人が楽しそうに語り、私はそれを聞いてドキドキしたりハラハラしたり、笑ったりする。
私にも時間が流れていることを、初めて感じた。
二人だけの秘密が増えていった。
一人だけの秘密も増えていった。
いつだって木の下で話しているあの人を見て、一度、部屋の中へ誘ったことがある。
そうしたらあの人は首を振った。
おれはこっちの方が落ち着くんだって。
窓枠なんていうほんの数センチが、とても遠く感じた。
手を伸ばせばきっとその腕に触れる事だってできるはずなのに、それがどうしてもできなくなった。
(じゃあ、私がそっちに行くわ)
あの日、それを言えなかったことだけが、今でも心残り。
だから私は、今、あの人に負けない勇気を手に入れるために、夢を見ている。
あの人がどんなに傷ついて帰ってきても、全て癒してあげられるように。
あの人がどれだけ勇敢な海の戦士になっても、胸を張って隣に立てるように。
そして私は、あの日と同じように首をかしげてたずねよう。
「それで、ねえ、今日はどんな話をしてくれるの?」
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嘘つきとお嬢様。
駄目だ…好きすぎて表現できん。
嘘を現実に変える程度の能力。
何もない島だってあった、3000万ベリーの賞金首にもなった。あとは何を叶えるつもりだ?
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