「お」
キッチンのテーブルを借りて、新しい星を開発している最中。
ふと顔を上げたおれの目にカレンダーが飛び込んできた。
三月のカレンダー。
その明日の日付、何も印の付いていないその日の部分を見ておれはその日が何なのか思い出す。
今日は三月一日、明日は…
アシタのケツイ
「サンジ、明日お前の誕生日だな!」
「あー…、そうだな」
「なんだよ、気のねェ返事だなァ」
おれは火薬匙をサンジに向けて振る。
「いいか、お前。誕生日って言ったら、一年で一番嬉しい日じゃねェか」
「何でだよ」
疑わしそうな視線を向けてきたサンジに、おれは胸を張って答える。
「何でってそりゃお前、ケーキが食えるんだぞ」
「こないだも作っただろ」
「う」
そういえば、数日前のおやつはフルーツと生クリームのケーキだった。
港で仕入れたミルクや果物が新鮮なうちだけしか食べられない食べ物。
つまり、港を出てからしばらく経ってしまった今では食べられないものだ。
それにサンジはコックだし、食べたいと思ったらいつでも食べられるんじゃないだろうか、とも思うし。
仕方なく、おれはもう一つの誕生日の楽しみを口に出す。
「…じゃあ、プレゼント貰えるとか」
「くれんのかよ」
「う」
確かに、今まで忘れていたわけで何もプレゼントは用意していない。
サンジが不機嫌そうにタバコを咥えてライターで火を点けようとした。
…が、カチカチと鳴るだけで一向に火がつく気配がない。
どうやら、オイル切れのようだ。
それを見て思い出す。そうだ、確かおれはライターを持っていたはずだ。
前にサンジに羨ましがられた記憶がある、ブランド物のデザインのやつ。
あれは、良いんじゃないだろうか。
「…サンジ、欲しいものある?」
だから、おれは聞いてみた。
火のつかないライターをカチカチやって不機嫌そうなサンジの答えは、予想がついているが。
「やるから、プレゼント。お前の欲しいものを用意してやろう!」
サンジが、一度カチッとライターを弾いておれを見る。
「欲しいものねェ…」
「おう!何でも言ってみろー」
おれが胸を張ると、サンジはおれをまっすぐに見つめて、こう答えた。
「おまえ」
…。
「あ、ライターか?丁度よかった、おれが用意したプレゼントもライターだ!」
「聞けよ、人の話を」
「ふぁい」
言葉がくぐもったのは、身を乗り出してきたサンジに鼻を掴まれたからだ。
「さてウソップ、おれは答えたぞ?」
「ライターな」
「…聞こえなかったみたいだな?」
「うん、だからライターだろ」
「…もう一回言ってやろうか」
「あ、ごめんなさい」
思わず頭を下げてしまった。
さすがにもう一度言われてしまったら、今度はもうしらを切りとおすことも…
「お前だって言ってるだろ」
「ぎゃー!!」
って言ってるそばから!!
おれは耳をふさいでテーブルに突っ伏す。
「だから、おれが欲しいモノは」
「ぎゃーぎゃー!!」
「おまえ」
「ぎゃーぎゃー!!」
「…うっせェなァ。そんなに嫌がるか?」
サンジがため息をついたのが気配で分かった。
続いて、シュッという音と、ポッという小さな音。
そっと目だけ上げて伺えば、サンジがマッチでタバコに火をつけたところだった。
「…まァ、とりあえずおれは希望伝えたから」
「…」
「あとは、お前が明日、おれに何をくれんのかだな」
サンジが立ち上がる。
数回しか吸っていないまだ長いタバコを灰皿に押し付け、レシピ本を片手に。
「楽しみにしてるぜ?ウソップ」
最後ににやりと笑って、サンジはキッチンから出て行ってしまった。
多分、ナミたちに今日のおやつのリクエストでも聞きに行くのだろう。
おれは、テーブルに突っ伏したまま動けなかった。
「…ぎゃー」
残されておれはとりあえず、小さく声をあげてみる。
耳にあてた手は熱い。多分耳は、頬も、真っ赤になっているはずだ。
こんな顔を、たとえ目の前に誰もいなくたってあげられるはずがない。
足をバタバタさせた。何でこんな恥ずかしい目に逢わなければいけないんだ。おれが。
「何が恥ずかしいって、別に嫌じゃねェところだよな、これは…」
サンジはずるい。ずるすぎる。
「ああああ、どうしよう、明日…」
三度も聞いてしまって、聞かなかったふりをすることなんておれにはできない。
かと言って、「プレゼントはおれだぜ☆」なんて痛すぎる。
…と、ここで全裸にリボンだけなんていう自分を想像してしまって目眩がした。
いっそ、何もなかったふりをしてライターをプレゼントするか。
だが、それでは何だか負けた気がするし。
でも、もしかしたら単におちょくられている可能性も、とかちょっと考えちゃったり。
だけど最後に「そんなに嫌がるか?」と言った時のサンジはちょっと寂しそうな顔をしていたし。
「…あー、もう…」
心臓がばくばく言いすぎて痛い。
もう何だか考えるのも面倒になって、おれはテーブルに突っ伏したまま大きくため息をついた。
吐いた分吸い込んだ空気には、薄いタバコの匂いが混じっていた。
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サンジ誕生日一日前。
当日に祝える気がしませんでした。
とりあえずサンジ誕生日おめでとう!!
だけど、オールキャラで別のネタも一本書きたい。
照れまくってぐるぐるする狙撃手と密かにとうとう言ってしまったとぐるぐるする料理人。
そんな二人が好き。
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