【 メンバー 】
ちゃもた:バシャーモ♂。チームのリーダーでヘソ出しマニア。
ライ  :フライゴン♂。変な大阪弁で喋る、ちゃもたの幼馴染み。
ロゼ  :ロゼリア♂。暴走しがちな仲間を抑えるツッコミ役。
しゅん :エネコロロ♂。心優しく真面目な、チーム唯一の良心。
散人  :クチート♂。無口で無表情だがしゅんにベタ惚れ。
鈴   :チリーン♂。人をおちょくるのが好き。
ハロウィン波乱。
ああ、と唐突に鈴が声を出したので、荷物を整理していたしゅんも地図を見ていたちゃもたとロゼも顔を上げた。
ちなみにライと散人が顔を上げなかったのは、ここにいないからだ。
旅の途中立ち寄ったある町。ライと散人は、必要なものの買出しに出かけている。
「そうか、今日はハロウィンなんだ」
「はろうぃん?」
一人で納得したように頷いている鈴に、しゅんが問いかける。
「あ、知らないかい?そうだなぁ…この町、妙に浮かれてるなぁとか思わない?」
逆に問い返され、しゅんは素直に町の様子を思い出す。
「そうですね…確かに」
「何か、子供たちが変な服着てたりしたよな」
しゅんが頷くと、ロゼも同意とばかりに喋る。
「ずるずるしてさ、ムウマかっての。あんなんじゃヘソも出せねーや」
ちゃもたが一言付け加えるが、誰の突っ込みもなかった。
「で?はろうぃんってなんだ?」
ロゼの言葉に、鈴は偉そうに一つ頷いた。
「ハロウィンっていうのは…まぁ、簡単に言えばお祭りの一つかな」
「お祭り?」
「年に一度、死者の帰ってくる日だって言われてるんだ」
「死者が帰ってくるって…」
「ま、言い伝えだからね」
少し顔を青くしたちゃもたに、鈴は涼しげな表情で答えた。
「それで?子供たちが色んな服を着ていたのとは、どんな関係があるんです?」
「さぁね?死者を迎えるために、自分たちも死者に近づこうと思ったんじゃない?」
話題を変えようとしたしゅんの思惑は、見事に外れてしまった。

「『お菓子をくれなきゃいたずらするぞ!』って言うんだよ」
「仮装をして?」
「そう。そういう無理が通る、一年に一回の日さ」
「くれなかったらイタズラしちゃうんですか?」
「そう。そんな無理も通っちゃう、一年に一回の素敵な日さ」
何か違うような気もするなぁとロゼは思ったが、自分もそう詳しくないので、黙っていることにした。
「何か面白そうだな!」
食いついたのは、以外にもちゃもただった。
死者の話に怯えて耳を塞いでいるかと思ったのだが、お菓子とイタズラ、という響きに、耳を押さえる手を離したらしい。
「よーし、しゅん、お菓子作ってくれ!じゃないとイタズラするぞー!!」
「駄目です!ちゃもたさん、仮装してないじゃないですか」
「仮装しないと駄目なのか、鈴?」
「駄目なんじゃないかな?その格好じゃ、ハロウィンだってわからないからね」
「むぅ…そうか…」
しばし考え込んで、そして急にぽんと手を打つ。
何も言わずにゆっくり上げた視線が何か企んでいることに気付き、しゅん、ロゼ、鈴の三人はこっそりため息をついた。


「気になるん?」
その声に、散人はライの方を見た。
両手に食料の入った紙袋を抱え、こっちを見ている。
散人の手にも袋はあるが、こちらは薬や服など、食べ物以外のものが入っている。
「別に」
「嘘やん。お前の目、ずぅーっと町並みと子供たちばっか追ってるで」
その言葉に目を逸らせばまた、変わった服装の子供が視界に入り、ついつい眼で追ってしまう。
「ほらな、また見とる」
「…あれはなんなんだ」
観念して散人は質問をするが、ライは一言、知らんと答えた。
「…」
「あ、でも聞いたことはあるで!ハロウィンっちゅー、お菓子の祭りや」
「ハロウィン?」
「変な服着て、トリックオアトリート…お菓子くれなイタズラするで!って言うと、お菓子もらえるっちゅう」
「…変な祭りだな」
壁には魔女が描かれたポスター、軒先には顔が彫られたパンプキン。
子供たちはムウマやロゼリア、ジュゴンのような華やかなドレス。
あの中のどれがしゅんに一番似合うだろうなんて考えている自分に気づき、苦笑した。
「散人ー」
声に顔だけ振り向くと、いつの間にライは立ち止まっていたようだった、少し後ろで、手招きしている」
「寄ってこ?」
指差す先に、子供たちのたむろする店先が見えた。その手にキャンディ、チョコレート、ゼリー。
しゅんが喜ぶかな、そんな事を考えて、散人は体ごと振り向くことに決めた。


「今帰…!?」
扉を開けた瞬間飛び込んでくる声、、パンと言う軽い爆発音と色の洪水。
「「「「トリック・オア・トリートッ!!」」」」
「な、何や何や?」
散人が眼を白黒させるその横からライが慌てて覗き込む。そして一言。
「…何やっとんのや、お前ら」
「ライ!命が惜しけりゃ菓子を出せ!」
「ちゃもたさん、それじゃただの強盗だよ」
ライに向かって両手を出すちゃもたと、それに慌てて突っ込むロゼ。
そのちゃもたの衣装は、裸の上半身に包帯を巻いた姿。
顔に傷の模様を描き、耳を覆うように大きなボルトの飾りをつけていた。
ロゼもいつもの露出度ではあるが、どの服も黒く、ゆったりとしたマントをその背に羽織っている。
恥ずかしそうなしゅんは、頭に茶色い獣耳、尻にも同じ色のふさふさした獣尾。服も、毛皮で出来たようなふわふわとしたものだ。
その向こうで笑っている鈴もいつもの水色のチャイナではなく、黒の上下と、その頭に魔女のような大きな帽子。
それのつばに手をかけて引き下げ、その下からライを見つめて一言。
「…似合う?」
「似合いすぎて怖いわ、アホ」
「ライ!菓子を出せ!」
「…ちゃも、お前もうちょっと落ち着き、な?」
菓子を出せ♪早く出せ♪さっさと出さなきゃ飛び蹴るぞ♪などと歌い出したちゃもたに、ライは呆れた視線を向けた。
そしてさらに振り向いて散人の方を見る。
「お前も、いつまで呆けとんのや、散人」
「あ、ああ」
その手にかけられた袋に勝手に手を突っ込んで、いくつかのカラフルなそれを取り出す。
「ほい、お望みの菓子」
「え、マジ!?よっしゃー!」
渡されたお菓子セットに素直に喜ぶちゃもた。それはキャンディやガムなどが詰め合わされたセットだった。
たくさん入っている割には安く、ライと散人、意見一致でちゃもたへのお土産に決まったという自信の一品だ。
それを見ていた鈴が、次の品物を出そうとしているライに話しかける。
「あ、僕はお菓子いいからイタズラさせて?何だか曰く有り気な人形を見つけたんだ」
「絶対嫌やっちゅーの」
カボチャが描かれたチョコレートをぽいっと手渡され、鈴はわざとらしく、ケチ、と呟いた。

「んで、しゅんには…」
「待て。俺が渡す」
ライを遮って、散人が一歩前に出る。
「参考までに聞くが…しゅん、お菓子をくれなかったら何をする気だ?」
「イタズラですか?えっと…わーって叫んで後ろから飛びついたり、口に運ぶ寸前の料理を横から盗んだり…」
「夜中に腹の上に座ってみたり」
「夜中に耳元で『ヘソ出し超萌え』って呟いてみたり」
「じゃあ僕は、夜中にこの人形を添い寝させてあげよう」
「あ、じゃあ俺も添い寝したろ!」
「お前らには聞いてない!」
しゅんの、ささやかながら精一杯のイタズラプランに萌え萌えしつつ、寄って来たその他大勢を振り払う。
そんなイタズラだったらされたいなぁと思いつつも、お菓子をもらった時の幸せな笑顔も見たいし。
「…これをやる」
「わぁ、ありがとうございます!」
オレンジのリボンで止めた、キャンディ詰め合わせパック。ムウマージの絵が描かれていて、なかなかかわいらしい。
その笑顔を見られただけでよかった、と散人も微笑んだ。

「最後になっちゃったけど、ロゼの分はこれなー」
「俺にもあんの?悪いな、ありがとう」
「悪いなって言う割にはノリノリやな、ロゼ」
「まあな。こういうのは、楽しまなきゃ負けだろ?」
「はは、せやな。似合ってるで、ヴァンパイア」
キャンディと、思いついてトマトジュースを一緒に渡してみる。冗談が通じたのか、ロゼは苦笑した。
その苦笑のまま、
「きっとお前にも似合うぞ」
「え?俺はええよ」
「いやいや安心しなよ、実はあるんだなぁ、これが」
そして、ロゼがどこから取り出したのか、衣装一式を取り出す。それを見たライの顔が青ざめる。
「い、嫌やそんなんっ!」
「でも今晩、この町でパーティ…祭りがあるんだそうでさ」
「そうなんだよライ!行こうぜ祭り!楽しそうじゃないか!」
「でもそんな服着ることないやんっ」
「着てなきゃ参加できないだろーが!…よっし、鈴!」
「了解だよ、ちゃもた君」
「うっ!?」
体が急に動かなくなる。目だけで鈴の顔を見れば、彼はにこりと笑って、歌うように言った。
「サーイーコーネーキーシース〜♪」
「ち、散人ッ!」
部屋の中唯一の味方の名を呼ぶが。
「に、似合うか?」
「わぁ、散人似合います!お揃いの尻尾、かわいいですねぇv」
「そ、そうか」
最愛の相手・しゅんとお揃いの服を着てはしゃぐ姿がそこにあった。
「…」
「観念しなよ」
「そうだそうだ!お前もこの衣装着て、一緒に祭り行こうぜ!」
ロゼの手には、穴を開けただけの白いシーツ。
「…そ、」
「そ?」
「そんな衣装は絶対嫌やああああああ!!!」
ライの悲痛な叫び声が響き渡ったが、指先は一ミリも動くことはなかった。


その夜は盛大な仮装パーティとコンテストが開かれ、ある旅人が優勝を飾った。
その旅人は頭からすっぽり白い布をかぶり、ふらふらとした足取りでリアルに幽霊を現していたという。

その旅人がライであったかどうかは、本人が語りたがらないので、定かではない。
 

我がサファパーティとハロウィン。
何故かライが被害者になってしまいました…
おかしいな、散人が被害者になるはずだったのに(何

読んでくださってありがとうございました!

 
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