サンジの属する部隊の隊長は、フランキーという。
ステーシー化した妹たちに体の大部分を食べられながらも、一人で二人をきっちり百六十五分割して再殺し、さらに、救急車が間に合わないことを知ると、その場で自らの体を機械で補修したという、もはや生きる伝説のような男だった。
フランキー隊はこの町で起こるステーシー騒ぎの解決を行うために本隊から派遣された小さなチームで、サンジが入った頃、メンバーはフランキーの他に数人しかいなかった。
その中で、フランキーの下に直接付いて彼を補佐していたのは二人。
ゾロと、ウソップ。
正反対の二人だった。ウソップが人懐っこく、入ったばかりのサンジにも気さくに話し掛けてくれたのに対し、ゾロは目さえ合わせようとしなかったのだから。
サンジは部隊に入りたての頃、ゾロが苦手だった。無口で目つきが悪く、殺人犯にしか見えなかったから。
―違ェよ。アイツは、ステーシーたちの悲しさを知ってるんだ。
だがウソップが教えてくれた。ゾロはステーシーに、幼馴染を殺されたのだと。
―だから、ステーシーによる被害を少なくするために…自分と同じ悲しみを負う奴を増やさないために、ステーシーをちゃんと再殺するんだ。
ウソップがゾロを見る目は優しい。ゾロだけでなく、誰に向ける目も同じように優しいのだけれど。
―再殺部隊なんかにいるやつはさ、多かれ少なかれ理由を持ってる。
―理由?
―ステーシーに関わりたい理由さ。
―お前も?
サンジが聞くと、ウソップは苦笑して答えなかった。
フランキー隊というのは、再殺部隊の中でもかなり異色の存在だとサンジは考えている。
サンジ自身色々な町を旅したことがあり、そこでステーシーや再殺部隊に関わったことは多い。
その再殺部隊たちがほとんどの場合、ステーシーを撃って斬ってブチ撒けてぐしゃぐしゃの潰れトマトにするのを楽しんでいる―楽しいと錯覚しなければ耐え切れないのかもしれないが―のに対し、フランキー隊にはそういった人間がいない。
何せ、人殺しの目に見えたゾロにすら理由があるのだ。
その理由は、トップに立つフランキーと、それからその右側を支えるウソップにあるのだろう。
フランキーは、とにかく面倒見がいい。
ナミを探してうろつき回り、とうとう倒れたサンジを拾い上げてくれたのも彼だった。仲間たちに入隊の理由を聞けば、そういった理由はいくらでも聞けることだろう。
悲しみや苦しみのどん底にいるものの手を、選ばずに惜しまずに引き上げる。それがフランキーという男だった。
当然救い上げられた人々は彼を尊敬し敬愛し、失ったものを再び与えられた喜びに、彼の役に立ちたいと思うのだ。
―だって、誰かがやんなくちゃいけないんだ。そうじゃなきゃ彼女たちがかわいそうだ。そうだろ?
そしてウソップは、いつもそんなことを言う。
妹を失った兄、彼女を失った彼氏、娘を失った父親。
彼らはその言葉に、失った自分の大切な人と、その最後の姿を思い出すのだろう。
骨が折れても肉が裂けてもゆらゆらと、歩き続ける彼女たちを。
―おれたちは彼女たちの悲しさを知ってる。彼女たちをどうしてあげればいいのか知ってる。
再殺。
大事な人に再殺してもらうことを、ニアデスハピネスに包まれた少女たちは望んでいる。
だけど、誰もが大事な人をその手で再殺できるほど心が強いとは限らないし、返り討ちにあうものだっている。
それに少女たちだって、全員が、自分を再殺してもらえるくらい大事な人に出会えるとも限らない。
だから、再殺部隊がいるのだ。
―彼女たちはおれたちを必要としている。だからやらなきゃいけなくて、それはおれたちにできることなんだ。
できるか、とウソップは問う。
―あんたが歩き続けられるためにできることを、おれは何でもやるから。ここをあんたの帰るべき場所にして、彼女たちを救うのに協力してくれないか?
その言葉に強く頷いたものが、フランキー隊の隊員となった。
サンジもそうだった。
いまや、隊長のフランキーまで含めて、その隊員の数は30にはなるだろう。
決して再殺部隊の小隊として多い人数ではないが、その絆はどこよりも硬い。
苦しみから救いだす手を持つフランキーと、歩きだす意味を与えるウソップと。
そんな二人がいるからこそフランキー隊の者たちは、少女たちを再び殺すなんていう地獄みたいな作業を、狂わずに行えているのだろうと思う。
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