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「お、ゾロ、サンジ」

玄関にたどり着いたとき、ちょうど向こうから入ってきたのはウソップだった。
血の臭いにむせることもなく、少し笑って片手を挙げている。

「終わった?」
「ああ」
「うわ、ゾロ血まみれー。クルマに着替えあるから、俺たちが掃除してる間に着替えとけよ!」

その背後に二人の男が立っているのに、その時サンジは気付いた。
サングラスをかけた男と坊主頭の男。ヨサクとジョニーだ。
二人とも酷く顔色が悪く、顔の下半分をマスクで覆っている。

「…遺族の悲しみを考えたら、汚いものを扱うようにマスクなんてしていられるか?」
「ゾロ、ゾロ、まだ慣れてねェんだよ」

顔面を蒼白にし黙り込んだ二人にゾロが詰め寄ろうとするのを、ウソップが手袋の左手でその袖を引いて止める。
ウソップは新入り二人を振り返り、その背を叩いた。

「ゾロは特別なんだ。大体、刀三本もブラ下げてる時点で変人だ」
「五月蝿ェ」
「大丈夫、段々慣れりゃいいんだよ」
「兄貴…」
「すいやせん、頑張りますから…!」

どうかここから追い出さないでくれ、と二人は口々に言った。
黙り込むゾロとの間にウソップは割って入り、にっと笑ってみせる。

「大丈夫大丈夫!まずは掃除から頑張ろうぜ。おれもこれくらいしかできねェし」

そしてべしべしと容赦なく、隣に立つ二人の背を叩く。
身長も、多分年もウソップの方が下なのに、その態度や口調は酷く大人びて見えた。

「じゃ、俺たち掃除してくるから。まだ帰んなよ!クルマ、今日は一台しかねェんだ」
「ああ」

ゾロが頷くと、ウソップはまた笑って片手を挙げた。
外に出るとき、奥に入っていったヨサクとジョニーの悲鳴やえづく声、そしてそれを宥めるウソップの声が聞こえた。




ウソップの車にたどり着き、そのトランクから着替えを出してゾロが着替えるのを、サンジはタバコを吸いながら見るともなく視界に納めていた。
汗と血に濡れた服。

「…今日も俺、何もしなかったな」
「そうだな」

討伐と解体をゾロが、その準備と片付けをウソップが。
この二人と組むと、いつだってサンジの仕事はない。
別の現場から次の場所へ向かうゾロが迷ってたどり着かないときはゾロの三本刀の代わりにサンジの『ライダーマンの右手』がうなることになるのだが、そんなことでもなければ、サンジが討伐の方を引き受けることはない。
準備や片付けについても、いつの間にかウソップが全て段取りを整えてしまうので、サンジはその段取りに従って動くだけだ。
二人がいなければ討伐もその片付けもサンジが指揮を執り行うことになるのだが、とは思うが、進んでなりたい立場でもないので、いつだってフランキーの采配のままに、二人と組むことが多いのだった。

「別にいいんじゃねェか。楽して給料貰えんなら得だろ」
「…まァな」

ゾロは淡々とそんなことを言った。
確かにその通りでもあるので、サンジは頷く。

「それとも、新人教育でもするか?」

上手なステーシーの分割方法でも教えてやれば、あいつらもその内役に立つようになるだろ、とゾロは言う。

「そりゃ、どっちかってっとお前の仕事だろ」
「斬り方ならな。だが分割方法ならお前の方が綺麗にできる」
「…そんなもんかね」
「ああ。おれが保証する。自信を持っていい」

そんなことに自信を持ってもな、とサンジは呆れようと思ったが、それは、今の自分の仕事なのだった。
得意なのは少女の体を綺麗に分割することです、という自己紹介とか。
それがジョークなのかアピールポイントなのか、この時代では難しいところだ、とサンジは思った。
 
 
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